任地に来て約2ヵ月半が経過。
私の活動はコミュニティ開発隊員としてはほぼ初代なのですが、活動として開始はできていません。ただ様子を伺っているとどうやら生活改善などの活動が求められるかもしれない。
今回は現時点(任地配属から2ヶ月半現在)での整理として
- 生活改善とはなにか
- 活動に取り入れようと思ったきっかけ
- 現在の所感
- 今後の活動のTODO
について書いていこうと思います。
「生改さん」「生活改善」とは何か
「生改さん」「生活改善」という言葉は聞いた事あるでしょうか?
「生改さん」「生活改善普及員」とは
戦後日本の農村はとても貧しく、特に農村女性の地位は低く生活環境や労働環境とても良くなかったといいます。
農作業を旦那さんと一緒にやって一緒に帰ったと思ったらだんなさんが休んでいる間に夕ご飯の支度をして、子どもの面倒を見る。朝は誰よりも早く起きて朝食の準備をしたりで、毎日の睡眠時間は約3時間。
お風呂も皆が入った後、ぬるくさめたお湯につかる日々。
子どもが生まれて世話をしながら農作業をして、休む暇はなし。
そして衛生環境も栄養状態も良くない。
そんな農村女性たちも姑には逆らえず男性にもついていくしかなく、権利はとても弱かったといえます。
そのような環境の中起きたのが、戦後の生活改善運動。
これは社会的に沢山の組織が取り組んで総括して呼ばれているそうなのですが、特に有名なのは農林水産省で集められて派遣された「生活改善普及員」と呼ばれる女性たち。「生改さん」と呼ばれる女性は彼女たちのことなのです。
そんな彼女たちは農村女性の生活を改善するべく様々なことにとりくみました。そして沢山の成果をあげ、生活環境を整えていきました。それが彼女たちが開発ワーカーと呼ばれる所以です。
実際にどんな生活改善をしたのか
たとえば彼女たちは農村女性の生活を改善するためこんなことをしました。
当時の農村女性の台所は衛生環境も悪くしゃがまないと使えないかまどでした。狭いし暗い、そして非効率。腰を低くして火をたいて作る食事。そんななか体調を崩したり、煙もすごいので眼病になる女性も多かったとか。
そんななか考えたのが「改良かまど」。かまどの位置をたかくして煙突をつけて、熱効率の良く眼病にもならない腰も痛めないかまどを普及していきました。
当時の農繁期には農村女性の胃腸病が多かったとのこと。どうやら消化の悪いお米ばかりを食べているためだと考えた生改さんはパンづくりを普及することに。食文化を変えるというのはとても骨の折れることだったとのことですが、結果おはぎがパンに変わり、偏りがちな食生活が少しずつ変わっていったということです。案外手間もかからなく、消化にも良く、美味しいということで好評だったようです。
当時の農村の台所は動線が管理されておらず、一つの夕食をつくるのにも腰をかがんだり立ったり沢山移動したりしていたとか。生改さんはそこに着目し、若嫁の生活に密着。実際にどれくらい台所内を移動しているのかを図りました。そして「一生で「稚内から鹿児島までを2往復」し,「3 年5ヵ月余り」を費やしていることになる」と分かりやすく報告。その環境を整えていきました。
これらはほんの一つの例で、生活改善普及員さんは全国各地で様々な技術や知恵を普及していきました。女性がこれまで「なんとなく」していたことの実態を捉えさせ、その不合理さ、不便さに気づかせ、改善への意欲を掻き立たせたといいます。
活動が進む中で農村女性たちの生活は改善されていき、自分でも生活を良くできるんだという気付きを与えたり、組織化をすすめて農村女性による自助グループが出来ていったといいます。
彼女たちの目標は単なる生活改善のだけではありません。農村の女性とともに考え行動して改善していくことで「生活をよりよくするために考える住民の育成」を目標としました。
そのため生活改善の技術の教示だけに終わらず、農村女性に自分でもやれば出来るのだという主体性と気付きを与えていったのです。
エンパワーメントは持続可能な開発の一つのテーマ。今から60年も前から開発ワーカーとして活躍していた生活改善普及員の女性たちはすでにその視点をもって活動をされていました。
生活改善の可能性
一見、戦後の日本の農村部の生活を改善した例に思われるかもしれませんが、この生活改善は現代の途上国開発においてもさまざまな可能性をもっています。
お金をかけなくても知恵と技術と主体性で、生活をよりよく出来る、その考えが何よりもどの地域の開発にも有効なのです。
たとえばJICAのレポートによると生活改善はこのような特徴をもっています。
- 参加型開発
- 学習機会や場の提供
- ジェンダー視点
- エンパワーメント重視
- 意識化
- 自立性の育成
- 人材育成
- 普及員・住民の能力強化
- 行政と住民、住民間での技術や知識共有
- 住民の組織化
- 他機関やプロジェクトとの連携協力
- 資源や利益へのアクセスのしやすさ重視
- 参加しやすい活動
- 持続性を意識
- 開発ツール作成や普及システム構築につながる
ー平成 23 年度プロジェクト研究 途上国開発における生活改善アプローチの適用可能性の検討報告書ー
戦後日本の農村地帯の生活改善の活動が、現在の途上国における開発ワーカーにとってたくさんの気づきと学びを与えてくれます。そして私自身、この活動が私の任地でもとりえるのではないかと思うのです。
活動に取り入れようと思ったきっかけ
ペルーの北部の町、私の任地はざっくり12万人の人口がいます。中心に役場のある栄えている部分があり(人口約3万人)私も住んでいます。周りには集落が広がっていて、莫大な土地に約190の集落が存在し、そこに沢山の人が住んでいることになります。
きっかけはここにきて2ヶ月が経ったころ。友人とお昼を食べていて話を聞きました。
町の中心に暮らしているというのもあり、あまり気付けなかったのですが、男尊女卑の文化がこの町にも根強くあり、各家庭の生活環境は良くないとのこと。(ペルーは全体的に男尊女卑の文化があるのですが、村落部は特に強い模様)
男性は稼いだお金を毎日600円くらい妻に渡すだけ、後はお酒などに費やして全部使っちゃう。暴力などもあるし、小学校卒業したら嫁ぐため学校には行かない女の子もいる。10代前半での結婚も少なくないのだとか。
女性の権利は低いからなかなか変わらないとのことでした。
また、現地に暮らしていて思うのは、農業従事者が多いのですが、お金を管理しているような感じはありません。自転車操業なのかなと思うような日々を見ていました。
現在の所感
友人に話を聞いたり、人々の日常にお邪魔する中で感じたこと。
それは
輸出の拡大や経済開発、観光の促進など、そういう大きいテーマも必要なのかもしれないけれど
どちらかというとその前段階、家庭の経済や生活の環境を整える必要があるのではないかということです。
お金を稼いでも、そのお金の管理を方法を知らなければ使ってしまい、更なる投資にはつながりません。
そのため、生活改善ということで、たとえば
- 家計簿をつけたり女性にお金を管理してもらったり
- 衛生環境を整えて健康状態を維持したり
- 女性の生活環境を整えて農業と家庭の相乗効果を狙ったり
- もう少し先の未来を見据えた働き方をしたり
そんな活動が潜在的には求められていると感じました。
今後の活動のTODO
とはいっても、私は町で生活をしているので集落までは心理的にも物理的にも距離がある。
他の友人や上司に聞いたり自分で感じるところはあっても、実際に対象者に話を聞いたりその生活を見ない分には実態もつかめない。
どうやって調査をしていこうか、というのが現在の状態です。
前に同僚に聞いたところ農村女性への援助を行う女性のグループがあるとのことで、まずはそちらに今度同行させてもらって活動内容を見てこようと思います。
ただ配属先も生活改善運動を主な仕事としていないですし私にはカウンターパートも立場の近い同僚もいないので、最初は一人で活動をしていくことになるのかもしれない。
もし女性グループの同行ができなかった場合、別のアプローチとしては次のような形でも活動が見込めるのかなと思います。
- 近くの集落の役場の女性に話を聞く
- 彼女と話して私が知りたいことを話す
- 集落の誰かオープンな女性を紹介してもらう
- その女性から話を聞いたり集落を歩いて人に話しかけてみる
- 話しかけた女性でウェルカムな人がいたらお家にお邪魔する
- 世間話を含めて適当にいろいろ話してみる
- 続く、、、
たとえばですが、そんな感じでイメージはしています。どれだけできるのかはわかりませんが。
この町にどんな生活改善が求められているかはまだわからないですし、女性へのエンパワーメントはセンシティブなところもあるので、ここはじっくり調査をしていきたいと思います。
生活改善に関する資料は割とあるのですが、どのように調査をしていくかの資料はなかなかありません。個人で活動するのは難しいのかなー。。
また活動に変化があったら書きたいと思います。