日々の記録〈ペルー〉

「慣れるのが仕事」の最初の1か月【協力隊生活のふりかえり】

青年海外協力隊でペルーにコミュニティ開発隊員として派遣され、任地について最初の1か月が過ぎました。

「慣れるのが仕事」の日々、今日で一応ピリオドです。

何を感じ、何を知り、何を学び、何を考えたのか。そしてこれからのことも含めこの機会に整理してみようと思います。

(トピックを選んだのですが、4000字を超えてしまいました。)

任地の印象

任地はペルーの北部ピウラ県のピウラ市タンボグランデ町。ピウラについたときは何にもない土の広がった土地にポツンと飛行機が止まった印象で、少し暑くて何にもないだたっぴろい空間が広がったそんな印象だった。

カウンターパートとピウラの中心地を出てタンボグランデに向かうとすぐ気が付くのは、ごみの山。分別されていないゴミが風に飛ばされたりして散らばっていた。カウンターパートに聞くとごみ収集所がないという。なるほど。この件は環境分野での仕事になるなと感じた。

最初にタンボグランデについたのはお昼の11時ごろ。THE田舎というようなその小さな町には何もないように思えた。ただただ暑くてその日は一日休憩をした。

それから一か月、畑に行ったり町を歩いたりご飯を食べたり人と話したり買い物をしたりマーケットに行ったりモトタクシーに乗ったりした。

外国人を知らない町で、中心地は3万人の町。商店はちらほらあるけれどその衛生状態は様々。交通はリマと変わらず荒いけれど、住民の足の中心はモトタクシーという2輪に乗車用の車が付いたもの。速度はそんなにないしコンパクトだから行動が読める。そんなに難しくない。

ご飯はおいしい。口に合う、残さず全部食べられる。ランチのためのお気に入りの場所も見つかった。

人は優しい。挨拶をするとあいさつで返してくれる。みんな暑いから家の前に出て涼んでいる。その光景はちょっとかわいい。

ピウラの中心地までは1時間だけれど、タンボグランデでもフルーツや飲み物ちょっとしたお菓子は買える。任地としては申し分ない。恵まれた環境だと思う。

町の外には大きな土地で畑がどんと広がっている。その面積はいかほどのものだろう。私の町の何十倍もの面積で育てられているマンゴー。食べるのが楽しみである。

総じてこの町が好きだ。治安は気を付けていれば特に問題はない。ペルーは全体的に危険だが、ペルー平均ではこの町の危険度は大きく下回りそう。

みんなは外国人に慣れていないし、なぜここに日本人がいるのか目を丸くして聞いてくる人もいる。その反応はちょっと面白い。

みんな家族が大好きで、お昼も家族と食べるために一回家に帰る。そんなところもかわいい。人には関心なくて期待も多分していないけれど、そんなに深く考えず人と接してそんなに深く考えず今を生きている。そんなイメージ。人間らしい。

雨が少ない。食べ物がおいしい。犬が多い。一見怖そうにみえるけど人は優しい。料理にこだわっている。暑くて涼んだりしている。モトタクシーが住民の足。みんなおなかがちょっと出てる。暑い。ピウラからアクセス良好。結構みんな時間や約束を思ったより守る。家族が大好き。特別な日にはみんなでビールを飲みながら踊る。

そんな任地が好き。そんなタンボグランデが好き。とても好き。

最初の一か月、疲れることも多かったけれどおかげで慣れてきた。慣れるのが仕事なのであれば慣れれて満足。次のステップに向けていい状態でバトンを渡せそうだ。

仕事のはなし

私は2代目。つまり、前任の方がいる要請。でもエルニーニョ現象の影響や役場の予算の都合で初代の方はコミュニティ開発的な活動が思うようにできず、環境教育を重点的にやるようシフトしたとのこと。

つまりコミュニティ開発隊員としてはほぼ初代。種まきから始まるということだ。

1か月みんなの仕事の様子を観察したり畑に行ったり書類を読んだりしてみた。みんなの話を聞いて理解に徹したり会議でも何を言っているのか聞いてみた。

経済開発課。私の配属先である。その下に環境保全課、地域農業開発課、商業観光課があり、私はこの環境、農業、観光という3つの柱を組み合わせ活動をしていくことになるという要請だった。実際問題来てみてそこまで大きく想像を外れていない。しかしながら活動のためのお金がないのが現実。

さて、お金を使わずどこまで種をまけるか。労働力としてはみんなとても高いポテンシャルを持っているみたいだ、やる気も経験も知識もあるように見える。ただお金がないからできることが少ない。「くすぶっている」、そんな印象。彼らもそんな風に説明してくれた。

私の26年のすべての経験をフル活用して、ここでの出会いとの化学反応でも普段からの妄想でもなんでもいいから、この町のためになるようなことをしたい。そのためなら私のどんな経験でも活かしたい。

感じたこと

感じたことはたくさんある。でも書ききれないので一番感じた「スペイン語力のなさ」について。これは本当に痛感した。

首都研修のリマよりも、駒ケ根の訓練所よりも、話せなくなってしまった。聞き取れなくなってしまった。通じない、わからない、どうしよう、、、。まあどうしようといっても語学力を上げる以外の方法はないんだけれどね。(2週間くらいして、わからない原因がここのひとの話す速度にあることがわかった。気づくの遅いけど、ここのひと話すのめちゃ早い。。。)

幸いなことにホストファミリーはわりかし声をかけてくれる。だから夜も人と話すタイミングはある。仕事でも基本的にいろんな話が飛び交っている。環境、観光、農業、そしてお金の話や生活の話も。聞き取れないことも多いけれど耳は慣れてくる。それは大変ありがたい。

あとは自分の努力。どれだけ使える単語を増やしどれだけ使える表現を増やすのか。そして聞き取るのか。単語を覚えたり覚えた表現を使ってみたり、それは今後の課題でもある。正直最初の1か月は町を知ることに必死になっていたためあまり時間を割いて勉強はできなかった。

着任から1か月、昨日は同僚に「少しわかるようになったね」と言われた。なかなか自分では気づけない部分だからとてもうれしい。そういえば前よりは他の人の話が聞き取れるようになったり、単語を理解できるようになった。どうやら1か月で成長できているみたいだ。

「1か月で語力をより向上させる」それは当たり前のことかもしれない。けれど私は当たり前のことを当たり前にすることが意外に大変であることを知っているため、当たり前であってもそれができたなら自分を褒めようと思う。よくやった、明日からも引き続きよろしくな!と。

学んだこと

学んだこともたくさんある。でも1か月目で一番ふーんと思ったことをここでは紹介しよう。それはこの町はポテンシャルがある町だということ。

  • マンゴーやレモンの栽培が盛ん。広い土地がある
  • 労働力もある。子供も多い
  • ピウラからのアクセスが良い
  • 町も比較的栄えている(マーケットに行けば生活には困らない。その辺にもたくさん商店があり、商売しているのか涼んでいるのかわからないくらいなので夜でも買おうと思えば買える)

比較的みんなちゃんとしている。役場はしっかり機能しているし、警察も良く目を見張らせている。銀行もあるし中心には広場もある。働いて休んで買い物をして家族と過ごす。無理のないような生活があるように感じる。

ただみんなちょっともやもやしている。きっとこの町が好きなのだ。

「家族がいてアットホームなこの町。大きく不便はしていないけれど、こんなにいいものを作っているのに、いい町なのに、このタンボグランデを知る人が世界にはとても少ないということ。」

それがもやもやな正体なのではないかと思う。

みんなが自分の町を好きなのは何よりも強みだ。そんなポテンシャルのある町と自分はどうかかわっていくのか。どのように種をまくのがこの町にとっていいのか。そこは慎重に見定めたい。

考えたこと

日本で会社員をして辞めてこの町に来た。学生を卒業して、サラリーマンをやってフリーターになって今はボランティアの身。日本の「働く」については一定の見解がある。

こちらの「働く」の形。それは日本とはちょっと違う。

例えば時間や勤務形態。長時間労働が美徳とされる傾向のあった日本とは違い、こちらは長時間働かない。残業代が出ないからだ。終身雇用、年功序列が主であった日本とは違い、こちらは勤務契約によっては長く勤めても首を宣告されれば明日から職を失う。

日本の、上司にぺこぺこする感じがすごく嫌いだった。前職では、尊敬もしていないのに上司というだけで神様みたいな感じで接する人がいてみていられなかった。自分の心にうそをつくのを見ているのが辛いのだ。

ここではそんな接し方はしないにしても、上司に対してかなり緊張感をもって接している。一つ間違えればリストラされかねない環境。それは正直とても緊張感がある。私が日本で嫌いだった「上の存在」に対しての態度。ここでの上司とのやりとりをみて、生活が懸かっているかれらのその態度は至極まっとうに見える。自分が今まで嫌いだったもの(といっても日本のそれとはやはり種類が異なるが)、少し違って見えるのだ。

働くに伴って感じるのは金銭感覚。物価が違うため日本の3分の1の値段で物が買える。その分給料も低い。ただ日本の3分の1という感覚でコミュニケーションをとると間違いが起きる。ここの人の100円の価値は、私たちの100円の価値とイコールではないのだ。

そんな金銭感覚を次第に覚えはじめ、一か月でようやく慣れてきた。どうしたらここの人たちの金銭感覚がわかるのか、日本から来たお嬢様感を出して心の距離が遠くならないよう、この1か月一番考えて気を遣ったのは金銭感覚かもしれない。

今では30ソル(900円)が大金だ。3000円に感じる。実際こちらではそうなのだ。そういう感覚は沁みついてきた。

これからのこと

6月末にある研修までに次のことに意識をしたい

  • 単語を覚える
  • 人に積極的についていく
  • 気になることがあったらすぐに聞く
  • 恐れずに友達をつくる

活動についてのもっと専門的な話はここにかけないほどの量であったので今回は割愛。

よく寝てよく食べて、とても楽しい1か月だった。

町を知れたこと。情報を収集できたこと。人の輪に入れたこと。閉じこもらずにオープンになれたこと。スペイン語に接しようと心がけたこと。

良かったと思います。

最初の1か月、マイペースに頑張れました。お疲れさまでした。